(※本記事は2011年6月5日に執筆したものに、加筆、訂正を行ったものです)
ある女性が、シンガポールへ旅行に行った。
目的は、「シンガポールと言えば?」と訊いたら9割以上の日本人が答えると信じて疑わない、あの「マーライオン」を見ることだった。
一度でもシンガポールへ行ったことのある人なら、ここまで読んで思わずニヤリとしてしまうだろうか。同じ目的で訪れた人ならなおさらだろう。
実はこのマーライオン、「世界三大がっかり」という不名誉な扱い方をされているのだ。
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| マーライオンの後ろ姿~建設中のマリーナ・ベイ・サンズを望む |
もちろん、マーライオン自身に非はない。シンガポールの歴史やその国名の原義を知れば、その存在意義がわかるはずだ。問題なのは、行く前に過度な期待をしてしまうところにある。見る前と後のギャップが激しすぎる。地元の方にどんな思い入れがあろうと、どんな歴史的背景があろうと、よそ者の我々からすれば公園にあるユニークな形をした噴水なのだ。
だから、マーライオンを見る目的でシンガポールを訪れて、「いやー、マーライオン、よかったよ」と答える人は少数派だ。その女性も、納得できない様子で帰ってきた。
ガイドブックがいけないんだ、という人もいる。日本の観光ガイドブックを見ると、あのマーライオンの雄姿を大写しした写真がページを占領している。他にも良いスポットがたくさんあるというのに、それらを押しのけて「これですよ、これ」と見るものの目を奪う。「ああ、そうなんだ、きっとすばらしいんだろうな」と勝手な幻想を抱く。期待しない方がおかしい。
私は、出張で滞在した際に、地元のガイドブックと地図を購入した。そのガイドブックは300ページ近いもので、地元民や外国人滞在者もターゲットにしている。件(くだん)のマーライオンを探すと、中ほどのページにひっそり掲載されている。ただし、日本のガイドブックのような「ライオンの頭に魚の胴体」程度の薄っぺらな解説ではなく、きちんと歴史や由来に関して詳細に記述している。これを読んで、「きっとすばらしいんだろうな」などという過度な期待は決してしない。
出張先の地元民もある意味、冷静だった。「今度の週末、いいところに連れて行ってあげるから」と誘われた先は、日本のガイドブックには載っていない場所、地元民向けの観光地だった。「土曜日は割引してくれるんで」…そんな理由で乗りなれない地下鉄やシャトルバスを乗り継いで来る観光客はいまい。もちろん、シンガポールの目抜き通り「オーチャード・ロード」は外せないのか、真っ先に連れて行ってくれたが。
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| オーチャード・ロード |
で、帰国の前日、勤務中に彼らの一人がちょっと遠慮がちに尋ねてきた。
「ところで、あの…マーライオンは見ました?」
見てなかったので、あわてて見に行った私。そうそう、シンガポールに来たんだから、あのマーライオンを見ないとね。
…あれ?


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