(※本記事は2012年4月15日に執筆したものに、加筆、訂正を行ったものです)
短期間ではあるが、仕事でタイにいたことがある。
残念ながら、観光はまったくできず。というのも、到着翌日から帰国当日まで、朝5時半起床、深夜1時就寝の毎日で、そんなことをしている暇などなかった。
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| 車窓から望む、タイの日の出 |
だから、タイを実感できたのは、食事と、出張先のタイ人スタッフとの交流においてのみだった。
さて、私は「パクチー」が苦手である。
パクチーは、中国語では「香菜(しぁんつぁい)」、英語では「コリアンダー(coriander)」と呼ばれる香草であり、タイ料理においては「これがなければ成り立たない」くらい定番の、風味にちょっとクセのある食材である。日本で言えば、わさび、ゆず、みつばとか、そんな類のもの。だから、パクチーはいろいろな形で料理に加えられている。ある時は隠し味として、ある時は具として。具なら「つまんでポイ」で済むのだが、ソースなどに刻んで入れられていると、なす術がない。
そんなわけで、私は観念してすべて受け入れることにした。郷に入っては郷に従え、と言うではないか。
でも、それを頑なに拒んだ方もいた。
よっぽど嫌いなのだろうか、ソースに刻んで入れられたパクチーを、すべて「つまんでポイ」していた。その行為が無意味であることもわかっていた。ここまで刻まれていれば、その風味はしっかりとソースにしみこんでしまっているのだから。
そんな彼に、私はとっておきのタイ語を教えてあげた。それが、「マイ・サイ・パク・チー(mai sai pak chi/ไม่ใส่ผักชี)」である。
「マイ・サイ(mai sai)」は、英語に置き換えると "not add" とか "not put" になる。つまり「入れるな」である。レストランなどでも使える便利なフレーズである。
それ以来、彼は仕事中、口癖のように「マイ・サイ・パク・チー」を言うようになったが、これが意外と現地スタッフに受けていた。日本だったら、「わさび入れるな」とか「みつば入れるな」とか言いながら仕事をする外国人がいるようなものか。確かに滑稽だが、自国を象徴する食材を面と向かって拒まれながらも、それを笑顔で包んでくれるタイ人に、ちょっと申し訳なさも感じたのである。

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