(※本記事は2012年12月5日に執筆したものに、加筆、訂正を行ったものです)
それは10月のある日曜日の昼下がり。
突如、松茸を買いに行こうと思い立ち、愛知県瀬戸市の某所まで車を走らせた。そこは、良質の国産松茸を格安で購入できるところ。今年もかなり期待して向かった。
しかし。
駐車場に車を停め、店を眺めたが、松茸らしきものは全く見えず。あるのは自然薯や柿など。
そこの店主らしきおじさんに声をかけてみた。
「もう松茸は終わっちゃった?」
すると、想定外の答えが。
「前、ここで店をやってた人が亡くなったんですよ」
このおじさんは、その場所を引き継いで店を開いているという。そんな事情に耳を傾けていたら、
「そうだ、お兄さんが瑞浪で店をやってるから、連絡取ってみましょうか」
と、いきなり携帯電話に手をかけた。
ちょっと迷った。岐阜県瑞浪市である。もう昼の3時をとっくに過ぎている。そんな私の心の中を見透かしたように、
「こっちの方にも出張して売りに来ているみたいだから」
と背中を押すような言葉を加えた。結局、電話をかけてもらうことに。
前の店主のお兄さん(も、おじさん)は、弟が世話になった旨、とても丁寧に礼をおっしゃった後、明日の昼間ならご自宅まで松茸を配達しますよと持ちかけてきた。しかし、平日の昼間は約束できないので、今から行くと伝えた。すると、
「明世牧場にいますから。インターを出て左に曲がると幟(のぼり)があるのでそれを目印に来てください」
と、道順を教えてくれた。
実は、「明世牧場」は実在しない。私は、聞き間違いをしていた。
とりあえず、せと赤津ICから東海環状自動車道に入り、土岐JCTから中央道へ、そして、瑞浪ICで出た。
そして、左に曲がったが…。
牧場の幟など、見当たらなかった。
とりあえずそのまま直進し、瑞浪駅へ。そこで重大なことに気付いた。
燃料がない。
ガソリンスタンドに向かうも、どれも個人経営で、日曜は軒並み休業。松茸どころではなくなってしまった。
なんとか給油を済ませたが、その頃にはもう、日はかなり西に傾いてしまっていた。
しかし、牧場の案内などどこにもない。仕方がないので、コンビニに車を停めて「お兄さん」に電話をかけてみた。
そこでミスに気がついた。
「牧場」ではなく、「ゴルフ場」だったのである。
あったあった。ICを出て左に曲がったところに「明世カントリークラブ」と書かれた小さい案内看板が。入り口で待ってくれているとのことで、遅くなったことを詫びて電話を切ると、すぐに向かった。
瑞浪ICに向かうランプをくぐり、市民公園を抜け、トンネルをくぐり、突き当りを右に曲がり、「え、ここ?」というような脇道に入り(ゴルフ場というのは往々にしてこういう場所にある)、ゴルフ場に到着。
確かに、お兄さんは入り口で待っていた。
クラブハウス内の場所を借りて商売しているらしく、そこには栗や柿といった秋の味覚に囲まれ、籠に入れられた松茸が鎮座していた。といっても、もう夕方である。ほとんどは売れてしまい、数えるほどしか残っていなかった。すると、
「売れるといけないと思って、いいのを取っておいたんです」
と、お兄さんは奥から松茸の入った2つの籠を取り出した。
「これは国産で2万円ですけど、弟がお世話になったから、1万円にまけておきます。どちらかお選びください」
年に1度しかお目にかかれないものである。300グラム入りのそれを1つ手に取り、香りや張りを確かめる私。まあ、そんなことをしたって、良いか悪いかなんてわかりっこないんだけどね。
「これもどうぞ」
と、栗や柿を1袋ずつおまけしてくれたお兄さん。松茸の値段なんてあってないようなものだということくらいわかってはいるが、ここまでサービスしてくれると気分がいい半面、申し訳なくなってくる。
そんなこんなで、松茸を手に入れることができたのである。

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