(※本記事は2013年3月3日に執筆したものに、加筆、訂正を行ったものです)
それは、ある冬の夕暮れのこと。
電車を降り、改札を抜け、駅を出た私は、自宅近くを通る路線バスに乗り込み、席に着いて、窓から外を眺めた。
雪が降っていた。
明かりが点りはじめた街灯、それに照らされ、夕闇の中で時折白く光った。
この日は私の誕生日。家族と外食の予定だった。
程なくして、バスが動き始めた。ロータリーをゆっくりと周り、公道へ…。
おや?
その公道への出口に、某大手警備会社のバンが駐車されていた。
この駅のロータリーは一方通行。つまり、出口は車1台分の幅しかない。バスはそのバンと路肩の間を器用にすり抜けようと、さらにゆっくりと進んだ。しかし、バスがそこをすり抜けることはできなかった。どうやってもバンと接触してしまうことが判り、運転手はそこでサイドブレーキを引いて、無線を手にした。
ここからが大変だった。
ロータリーへは次々と自家用車やタクシーが進入してきた。そりゃそうだ。帰宅ラッシュの折、それも雪が降っていた。迎えに来る車も多くなるし、タクシーの利用客も普段より多いのだ。
ものの5分もしないうちに、駅前は大混乱に陥っていった。
タクシーの運転手たちが、バスの運転手に詰め寄った。
「なにやってんだ! さっさと出ろ!」
「無理に出ると、バンをこすっちゃうんですよ」
「まったく面倒なところに駐車しやがって」
そんなやり取りが続いた。
やがて、短気なタクシー運転手の一人が、警察に通報した。
「今、○○警備の車がね…」
その間にも、車はどんどん駅に集まり、パニック状態に。
私はそんな状況を、バスの中から眺めていた。
「こりゃ、帰るの、遅れるな」
そんなことを思いながらぼんやりとしていると、渦中の警備会社の人間が二人、帰ってきた。
二人とも、驚きを隠せない様子だった。何も驚くことはない。当然の結果であろう。
思ったとおり、タクシー運転手たちが二人に詰め寄った。言葉による袋叩きが始まった。
「すぐ移動させますから」
そう言って車に乗り込もうとする警備員。しかし、タクシー運転手たちの怒りは収まらない。
「逃げるなよ!」
「警察が来るまで帰さんからな!」
やっとバンが移動し、出口が確保された。バスはなんとか無事に駅を出発した。
その後、警備員たちがどうなったのかは判らない。
さて、私はこの話を持ち出すことで、違法駐車はやめようとか、そんなことを訴える気はさらさらない。
あの某大手警備会社の警備員たちが警官に絞られる画を見逃したことを、ただただ惜しく思っている、それだけだ。
ちなみに、私の誕生日会は、つつがなく終了した。

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